第11章 救われたのはどちらから
「これはね!戦略ゲームなんだよ!」
座ることを促しながらこのゲームに必要な物を鞄から出していく。その中から出てくる大半は操作するのだろう駒だが、カードも数十枚出しては束ねてボードの真ん中に置いた。
「懐かしいな。最近チェスとかトランプばっかりだったから無くしたんだと思っていたよ」
そう言いながらスチュワードが左隣の椅子に座る。
「カーディちゃんと初めて会った時に酒場の兵士さんに教えてもらったんですよね」
懐かしみながらもアドナキエルが右隣の椅子に座る。
「そうそう!その時はボコボコにされちゃったけどね!」
カーディは机を挟んだ向こう側に座った。これで机を囲うように4人が座ったことになる。
ボードを見ると、基本的にマス目が刻み込まれたものだ。手元にはそれぞれ種類の違う兵士が各4体ずつ。数えてみれば32体が持ち駒のようだ。
「あ!始める前にちょっとしたペナルティつけようよ!」
「ペナルティ?」
「そう!陣地を取られちゃった人は、勝ち負け関係なしに、取った人の言うこと聞くの!」
「それって私がめっちゃ不利だよね!!?」
「フッフッフ…さくらちゃんに言うこと聞いてもらお!」
「酷い!!」
可愛い顔をして結構えげつないことをする子である。
「ルールを簡単に説明すると、これはね、自分より手前が陣地なんだよ。ここに相手の兵士が入ると1ダメージを負うんだよ。だから、陣地に入られないように…それ!」
「!うわ」
カーディが指を振るうと、4人が持っている全ての駒が指定の場所に綺麗に並んで行き、自分の駒の一つひとつに数字と役職が表示され始めた。
だが、3人の手元を見ると、表示されていない。
「今目の前に見えているのは自分以外には見えないよ。ゲームを始める度に兵士の戦闘能力と性格は毎回ランダムで決まるようになっているの」
「…それで、これってもしこの駒がやられてしまえばどうなるの?」
「ゲーム中は使えなくなるよ!あ、ちなみにゲームが始まれば自分以外の声は聞こえなくなるよ。観戦してる人は聞こえるけどね」
本当に良くできた世界だな、と駒に触れる。どういう原理で自分にだけ見えているのかはわからない。
だが、このゲーム…普通に楽しめるものではない。もっと、残酷にできたものだ。