第10章 療養中
「アドナキエルくん…!この子が…まさか!」
「え?」
不意に机を挟んだ向こう側から声がした。
2人して前を向くと、そこにはクリーム色の髪を持った女の子がやや上半身を乗り出した状態でこちらを見ていた。
「あぁカーディちゃん。そうですよ、この人がさくらです」
「!さくらちゃん!!」
そう言って彼女は私の右隣に座った。可愛いが極端に顔が近い。
元気でパワフルなその姿は、まるで自分の知人を見ているようで、頬が引きつった。この場からシリアスという言葉が、まるで息を吹きかけられた藁の家のように吹き飛んで行ったことに驚きだった。
「カーディ、そろそろ空気を呼んでくれ」
「あ!スチュワードくん!メランサちゃんも!」
「メイリィ…さくらさんが困っているから控えめにね…」
2人がトレーを持って戻って来た。
スチュワードの冷めた対応も驚きだが、メランサが敬語と敬称をしていないことに驚きだ。
カチャリ、と机を挟んだ向こう側に2人が座る。と、スチュワードが顔を上げた。
「さくら、同じ行動予備隊A4のカーディだよ」
「カーディだよ!」
「?…でも今メランサちゃんはメイリィって「メイリィは私の本名だよ!!」(パ、パワフルだ…)」
圧倒的圧迫感に少しアドナキエルの方に逃げる…と、彼も彼でめんどくさい奴で…
「うん?俺が必要ですか?」
「うん必要でない。てか何で食事中に必要になるの!?」
「俺は嬉しいです「ねぇ自己完結しないで?」
アドナキエルも厄介である。
兎に角、3人は食事を始めている。自分も食べようとしたところで、右腕をカーディに掴まれてしまった。