第10章 療養中
「(3日シャワー浴びてない状態で抱き付かれるのホント地獄だよなぁ…メランサに抱き付くのも今思えばやばい…)」
心の中でボヤキながら、一人食堂に設置された長椅子に座って食事をとりに行ってくれた3人を待っている。
アドナキエルとメランサはどちらが残るかもめていたが、最終的にスチュワードがどちらも連れて行ったおかげで今は暇だ。
ふう、と息を吐いて改めて自分の手を見た
何もない。手はもう戦闘でついた傷なんか無く、この世界の治療技術が進んでいるお陰だろうと納得した。
自分が特別なことは一部の人間しか知らない。なので気持ち的には楽だが、周りの目はどうなのだろうとまた少し心配になる。役に立っていないのに、という目で見られているのではないかと。
「何でまた暗い顔しているんですか?」
「う、わ!?」
すぐ横に座ったのはアドナキエルだった。この男はまるで暗殺者のように突然姿を現すので心臓に大変よろしくない。
2つ持っていたトレーの内、一つを私の前に置くと、机に左肘をついて頬杖をつき、空いた右手で私の頭を突然撫で始めた。
「まだ他人の目が怖いですか?」
「…いっつも思うけど、何で考えてることがわかるの…?まさか天使の能力…?何それ怖い」
「まさか。…君がオペレーターたちを目で追っていたんじゃないですか」
「…流石狙撃班…観察力凄い」
「はは、褒めてもらって嬉しいです。でも、」
言葉を区切ったアドナキエルは、頬杖をやめ、私の左手を両手で握った。
「さくらの方が凄いんです。みんなに知られてなくても、もっと胸を張って下さい。…それでも怖ければ、俺がずっと隣にいますよ」
「アドナキエル…」
金色の目がにこりと笑う。
この男は何度私を救えば気が済むのだろうか。
私も思わず釣られて笑ってしまった。―――そんな時。