第10章 療養中
「さくら「何も言わないで…」お腹空いてるんだね」
「3日も寝てればそうなります…」
「3日寝てたの私…うあああ恥ずかしすぎる…」
「じゃあ食堂に行きましょう」
アドナキエルの声に左右の2人が頷き、進路が変わっていく。
何だか、この空間がとても心地よくて、この温かい気持ちをどこかに表したかったが、左側にいる男性陣に出すわけにはいかなくて、腕に掴まっているメランサの腕にギュッと力を込めた。
「!さくらさん…」
「はは。ちょっと嬉しくって!…駄目かな…?」
「駄目じゃ、ないですよ。メランサがいます」
そう言って彼女は私の腕に捕まる手の力を強めて体を寄せた。身長差と獣の耳と容姿も相まって本当に可愛らしい。
「微笑ましいね。って…混ざりに行こうとするなアドナキエル!コラ!」
「俺の時と大違いなのは何故ですかー!」
「煩いイケメン!その顔で抱き付くのが罪!心臓止まる!」
「そんなことで死ぬ人はいませんよ。俺も抱き付きたいですっ」
傍から聞けば危ない会話である。
必死にスチュワードが止めているものの、アドナキエルはお構いなしに近寄ってくる。抵抗空しくも、廊下に私の悲鳴が響いた。