第10章 療養中
「ここでレユニオンからは絶対死守ということになったため、お前を前線に出すわけにはいかなくなったのだ。能力がないわけではない。お前は十分優秀だ」
「ドーベルマンさん…」
目の奥が熱くて痛い。駄目だ泣きそう、と思った時にはもう目から感情が溢れ出ていた。その涙をドクターの手が拭っていく。
「辛い思いをさせたな。…これからは保護対象者で…と言いたいが、ここでロドスからさくらにお願いだ」
「…」
「今まで通り衣食住の保障に加え、報酬も払う。だから、世界を変えるために君の力を調べさせてほしい」
自分には変える力がある。
世話になった人たちの仕事が少しでも楽になるように、恩返しと思い前線を志願した。だが、それよりももっと彼らを救う方法があると知ればもう断る理由なんてなかった。
「報酬は、要りません。…ただ、彼らの救いになればそれで…」
「……ありがとう。協力に感謝する」
ドクターが私に手を出す。ここに来た頃にその手を握った。その時よりその手が大きく見え、ドクターの姿を真っ直ぐに見た。自分がこの世界を嘗め切っていたから、初めて握った手は小さく見えた。今は違う。
「これからも、よろしくお願いします。ドクター…!」
「はは。そんなに硬くならなくていい。あくまで私は君の事は友人だと思っている。不自由なことがないようにする。何かあればすぐに言ってくれ」
私はこの組織にどれだけ救われているだろう。
やっと、居心地のいい居場所を見つけたのだ