第10章 療養中
「…さくら、君にはこの世界を変える力がある」
まるで洋画の台詞のようだ。偉い監督が作ったSF映画に出てくる主人公が、謎の生命体の味方に言われるような、そんな大それた台詞。
それが自分に言われているとなると、頭は理解ができないと思考を停止する。
「…え?」
「アーツの力もそうだが…君には、君自身及び他の感染者の中にある源石を中和する能力があるそうだ」
「…え、は、ちょ…理解が、追いつかないんですが…?」
「世界の悲願。感染者を非感染者に変える力だ」
重苦しくドクターが要約してそう告げると、身体が勝手に震えて、頭が左右に揺れる。
自分はただ理不尽にこの世界に飛ばされ、何の役にも立たないまま死ぬんだと思っていたから。
だが、彼らは言った。世界を変えると。
「原理はわからないが、兎に角今ここにいるアドナキエル、スチュワード、メランサ、ドーベルマンさんの血中の源石濃度は下がりつつある」
「わた、私…何もしてないですよ?」
「こうして近くにいるだけで効果があるようだ。…進歩は牛歩の如くだが、効果があると我々は確信した。間違いない。現にアドナキエルが一番効果を立証している」
ゆっくりとアドナキエルを見ると、優しく微笑んでいて、不意に彼が言った言葉を思い出した。
『帰ったら、隠していた話をドクターにしてもらいますから。そんなこと言わないで』
あれは、このことだったんだと察する。
自分は"使えなくない"