第9章 酷い夢
「出入口はあの一つだけです」
「ひ、一つ?本当に!?」
「調査隊が捜索済みの結果です。…っと…」
さらに後退する。またアドナキエルが立っていた場所が岩崩れで道が塞がった。まるで、この穴倉が生きていて2人を袋の鼠だと言わんばかりに奥へといざなっていくようだ。
行きついた場所は貯蔵庫だろう何もない場所だった。
「食べ物を備蓄しておくんでしょうこの場所は、食べ物が傷まないように一番震度が低く設計されているはず」
「要するに…?」
「一番潰されない場所でもあるけど、ある意味詰みですね。助けがくるには数週間がかかる見込みです」
「そんな…!」
一旦さくらを下ろして、周りに何かないか探すアドナキエルだったが、あるのは食料だけで出入り口に詰まれた岩を壊せる道具などは見当たらない。
溜息を吐いたアドナキエルは米神に手をやり、案を考え始める。
「こっちに逃げたのが間違いだったかな…」
「…私を助けに来たのが間違いだった」
「それはないですよ。ドクターはさくらを友人として助けに来ました」
「ドクター…」
「…友人でなくとも、もし、君がレユニオンに"ロドスに利用されているんだ"と吹き込まれたなら、それは大きな間違いです。アーツが使えなくても、特別な力が無くても、さくらは保護の対象ですから」
本当に優しい天使だ、とその背中を見つめたさくらは、無言で小さく頷いた。その後徐に空いた左手を地面につける。