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【アクナイ】滑稽な慈悲

第9章 酷い夢



「?」

すると、コンと指先に何かが当たる。見ると、それは手のひらほどの小さな短剣だった。
それを拾い上げたさくらは、アーツ訓練時の時、クーリエに渡されたあの剣を握った時のような感覚に襲われ、眉を顰める。
ブワリ、と全身に鳥肌が立つ様な、全身の血が高速で巡るようなあの感覚に、目を開いて立ち上がり、すぐ近くの天井を見つめた。

「(武器に埋め込まれた源石の存在を知る)」

足元からパキリという音と共に氷が出現する。
その音に振り返ったアドナキエルは瞳孔をこれでもかと開き、さくらに近付いた。

「駄目です!あれだけ源石術を使ったさくらは確実に鉱石病が進んでいます!それがさらに浸食してしまうかもしれないのに…!」

「崩れないっていう確証はないからいつまでもここに居られないよ」

「途中で力尽きたり…成功するっていう保証もないんですよ!?」

「いつまでもアドナキエルに助けてもらってばかりじゃ悪いから」

「駄目です止めてください!君が死んでは元も子も「一緒に帰るの。ロドスに」!」

「私は死なない。約束するよ」

グッと握られた手に、アドナキエルの金色の目が初めて人の言葉で揺らいだ。同時に、心もその真っ直ぐな言葉に揺らいだのだ。

顔を逸らしたアドナキエルの普段とは違う振る舞いに気付かないまま、さくらは集中していく。
瞬間、彼女の左頬に黒い結晶のような物が浮かび上がって、それが米神から耳まで覆っていく。

それが感染者に現れる源石だと気付き、アドナキエルは瞳が揺らぐほどに慌てたが、さくらの言った言葉を信じ、握られている手で彼女の手を握り返した。
その行動に、笑ったさくらはグッと短剣を握り、高らかに掲げた。

「(上手く行きますように―――)」

願いを込め、短剣から放たれたのは周りの洞窟を崩れさせるほどの電撃、全てを氷結させる絶対零度にも見える白い熱線だった。


To be continued.
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