第9章 酷い夢
「…ロドス以外には。もう…ない」
「ッ!!」
「嘘つかないでって言ったのは俺で…どれだけ俺が頑張ってもさくらはやっぱり帰りたいと言いました…でも、もう元の世界に帰るのは諦めましょう」
「う、あ…?」
「…俺と一緒にロドスへ帰りましょう。そこが唯一の、君が帰ることができる場所だから」
「あどな、きえる…?」
少し体が離してみて見れば、赤い目はゆっくりとブラウンの目に戻っていく。正気に戻ったのを確信したアドナキエルはほっと息を吐いて両手でそっとさくらの顔を覆った。
「俺が守りますよ」
「…アドナキエルッ…!!」
冷気を帯びて冷たくなっているその体がアドナキエルに飛び込んだ。
しっかりと受け止めたその時、洞窟を覆っている氷が一気に割れては崩れていく。周りを覆っていた火や電流も軽い音を立てて消えていく。
その場にいたホッとしたのもつかの間だった。
「ドクター!」
「どうした?」
今いる部屋の外にいた警備班が慌てた様子で入って来た。
「どうやら壁を覆っていた氷が岩盤まで浸食していて、それが炎で焼かれることにより水となり、溶けだして今まさにここは崩れる一歩手前です!直ちに避難を!!」
「聞いていたな!全員退避だ!!」
頷いたアドナキエルはさくらに手を差し伸べた。素直にその手を握って立ち上がろうとするが、上手く行かない。