第9章 酷い夢
「行動予備隊A4は前へ!敵は少数!右翼側から殲滅せよ!!」
ドクターの声がかかり、オペレーターたちが一斉に数で押していく。
得物を振るう彼らの目は本気で、狭い穴の壁を削り取るほどに、敵に振り下ろす得物は躊躇が無い。遠距離オペレーターが放った矢は必ず急所を射抜いた。
「クーリエ!シージ!この部屋の残党処理を!行動予備隊A4は私に続け!」
「ドクターっ!いくらなんでも踏み込み過ぎです!」
そう言って彼の袖を掴んだのはアーミヤだった。彼女は焦った顔をしたまま、ドクターの歩みを止める。
「アーミヤ、私は冷静だ。ただ、行動予備隊A4は一見冷静に戦っていても、指示が無ければすぐに突出してしまうほど冷静じゃない。…私が導いてやらねば逆に全滅する」
「!た、確かにそうですが…もう少し慎重に「君はさくらを失っても良いと?」!…それは、駄目です」
「何故?」
ドクターがあえて聞いた。アーミヤはドクターの袖を離し、彼女がいるであろう穴倉の奥を見つめた。
「勿論、感染者の未来を変える人になるからです」
その答えにドクターは、アーミヤを一瞥した後、歩みを進め始めた。
得物で削られた穴倉に触れながら、ゆっくりと足を進める。
「…私たちは、友人を救うためにここに来た」
「!」
「アーミヤは、捕虜がいたら死ぬ前に助けたいだろう?」
「…はい」
「その逸る気持ちと一緒なのだよ。彼らと、私は」
アーミヤが見上げたドクターの顔は相変わらずフードで見えないが、いつになく真面目な顔をしているのだろうと悟った。
「…ごめんなさい、ドクター。私、何もわかっていなくて…」
「いい。さくらが奪還できればそれで。…手伝ってくれるか?」
「勿論です、ドクター!」
「よし。…!」
「きゃあっ」
急に地面が縦に揺れ始め、前方からは熱が肌に伝わるほどの炎が見え隠れしている。それには見覚えがあった。
ドクターより前方にいたスチュワードが炎を見て振り向いて声を荒らげる。