第7章 興味本位
銀髪のふさふさとした髪からピョコンと生えている獣の耳とスラリと伸びた斑点模様の尻尾がその強面と相反するように可愛らしい。
彼が私の前に来た時、クーリエが頭を垂れながら彼の一歩二歩と後ろに下がった。その行動に、すぐクーリエの上に立つ者なのだと察して態度を低くしてから一度会釈をした。
「さくらです。貴方は?」
「シルバーアッシュという。カランド貿易に所属している者だ」
「ロドスにいるわけではないんですね」
「条約を結んでいるだけだ」
「なるほど。…それで、何故私の事がお分かりになられたのでしょうか」
別に私は背中に"異世界者です仲良くしてね"というカードを張ってはいない。
そして異世界者という事実は全員が全員把握している情報ではない。珍しがった野次馬が集りかねないとドクターが配慮してくれているのだという。故に、前線に出ているオペレーターの数人しか知らない事実だ。仮にドクターが”異世界者が来た”と話した相手だとしても私が私だということはわからないだろう。
そんな考察をしている間に、シルバーアッシュは口に手を当てて不敵に笑ってみせた。
「今知り合った相手に渡された食い物など普通は口にせん。平和な世界にいた者はそうでないのだろう」
「!…はぁ、なるほど…」
「信頼できない相手からは物を貰うな。毒、爆発物…お前の命を奪うものがあるやもしれん」
なるほど、確かにそうだ。命が簡単に奪われる世界で自分は無防備すぎた。
すぐに軽く頭を垂れて礼の言葉を述べる。
「ご忠告感謝します。…でも、どうして私なんかに貴方のような人が」
「なに。ほんの興味本位だ。そこらの野次馬と変わらん。どんな平和呆けした者がこの世界に降り立ったのかと思ってな」
「今ので一回死んじゃったかな?」
「は、はは…本当に…怖い世界ですね」
空を一度見上げてみると、その色は一緒なのに見える景色はとても現代の物とは言えない施設に囲まれている。
元の世界の建物は主に鉄骨とコンクリートで固められ、ガラスがはめ込まれた数々の摩天楼が太陽の光に反射して蜃気楼を生み出す。そんな光景が今やとても懐かしく思える。
ここの施設は、襲撃に備えるため強固にできているらしい。太陽の光が当たってもそれは反射しなかった。