第7章 興味本位
インドア派で、元の世界では暇さえあれば電子機器に頼ってネットサーフィン三昧だった現代っ子の私だったが、ここにはインターネットもなければ暇を潰せるゲーム機器もない。
部屋でゴロゴロも30分もすれば飽きてくる。私ができることと言えば、兎に角鍛錬とアーツを制御できるようになる訓練する以外ない。前線にも出たいし、と腰を上げて部屋を出た。
デッキを永遠に走るのもいいが、アーツ専用のトレーニングルームがあったはずだ。とドーベルマンさんが言っていたことを思い出す。
「?」
だがロドスは恐ろしく広い研究施設だ。表向きは製薬会社…裏ではこういった戦闘する隊員を育てて戦う、といったことをしている。そのため、赴くところ全てに薬品の臭いがした。
故に、迷った。
「…どうしよ」
もう戻ることもできないほどに入り組んだ道を進んできた。
今までは3人のうちの誰かに連れられ、食堂やデッキに向かっていた。だが、改めて一人だったんだと気付くと何だか心細くなる。
過ぎ行く研究員に聞いても良かったが、その前に不意に後ろから声がかかった。
「やぁ。迷子かい?」
「!」
そこには耳の生えた黒髪の男が立っていた。
常にニコニコとして人に害を与えないような優しく、角が立たないその立ち振る舞いはどこかアドナキエルやスチュワードの雰囲気に似ている。だが、何故かそれが異様に"気持ち悪く"感じて私はポツリと呟いた。
「作り笑顔。私みたい」
本当に小さな声で、無意識に言ってしまったのだ。きょとんとする相手の顔にすぐにハッとして、頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!!失礼なことを「いやいや、大丈夫だよ。急に話しかけてすまなかったね」…ごめんなさい」
男は怒るどころか、その笑みを続けている。ロドスの男性は心が海のように広いようだ。自分を戒めて深く反省してから頭を上げた。今思えば、ここがもし古い日本の時代であれば、その腰にあるサーベルで真っ二つだろう。優しい男で胸をなでおろして安心した。