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【アクナイ】滑稽な慈悲

第24章 伝えたかった事



「<真実を知った俺を殺しに来たってか>」


彼の声が鼓膜を揺らす。
アルガムさんは顔を上げると、どうやら牢屋の外にいるのだろう人物を、怪訝そうな顔で見ている。自分を殺した犯人を見ているのだろう。だがその姿は再現されていない。


「<俺は源石術が得意なんだ。千里術でお前のやったこと見てたぜ。…全く…最近の若いやつはすげぇな。俺より源石術が扱える>」


嘲笑しながらアルガムさんは部屋を周りを見渡す。


「<さくらを悪役にして、お前さんは何がしたいんだ?ああっと!言わなくていい。大方、あの子にロドスを出て行ってもらいたいんだろ。人気者だもんな>」

「…」

「<だが残念。あいつはそんなことじゃ出て行かないぜ。…あの子を守るロドスの連中は沢山いる。それはあの子の人柄の良さで集まってんだ。敵対組織である俺にも優しくしてくれる。凄い奴だ>」

「アルガムさん…」


彼はゆっくりとベッドから立ち上がると人差し指を突きつけ、真剣な顔で言う。


「<どれも慈悲の欠片もないお前さんにはないものだ。未来ある若者をあんな殺し方しやがって。良い死に方はしないだろうな>」


笑うその顔をよく見れば、頬に汗が伝っている。
この先に来る"死"を覚悟しているように。


「<さぁて、お前さん。殺しに来たはいいがこの檻に触れればロドス中のオペレーターたちが飛んでくるぜ。どうやって殺す?>」


そう言って両手を広げた直後、彼の右手が飛んだ。
この場にいる全員が強烈な悲鳴に顔を歪め、目を見開いた。
何もない所から突然切られたかのように、あっけなく人体から離れた右手は地面にボトリと落ちた。


「<なる、ほどな…触れるまでもねぇってことか…はは…ははは……すまねぇ、さくら嬢…>」

「!待って!!」


瞬間、彼の体を覆うように業火の炎が渦巻いた。
生身で焼かれる叫び声は想像を絶する。それが喉が焼かれて悲鳴が消える前に、ホログラムは砂が落ちるような音を立てて消えた。

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