第24章 伝えたかった事
「待って。さくらのアーツ適正は彼を越えるかもしれない。…ドクターはそれを分かっていてさくらをここに呼んだんだと思う」
「…なるほど。さくら、やってみてくれるかな?」
「どうするの?」
「体に流れる源石の力を意識するように、紙にかけられた源石術を読み取るんだ。解読に入ると負の感情が流れてくるけど、それを越えたら解除ができる」
難しいことを言うなぁ、と先程彼らがやっていたように、両手を前に出して紙に向ける。
目を閉じ、その紙の方向から源石術を汲み取る。そこから読み取れるのは悲しみや憎悪、無念…全てアルガムさんの想いだ。
「(…確かに、辛い…)」
気が病みそうなほどの感情だ。
「(…まだ生きたかったのに殺されたんだ。そりゃそうだよね…)」
故に逃げるわけにはいかなかった。
その感情に触れるため、グ、と力を籠めると腕から黒い結晶が生えた。源石だ。
「…さくら」
アドナキエルが後ろで心配そうな声を出す。
その声を放り、さらに力を入れると、紙がキラキラと輝きだした。
「!さくら、解除ができた。源石術を出すように放て!」
「!っ」
腕を振るうと、まるで花火のようにパン、と音を立ててオレンジ色の光の玉が宙を舞う。
その光の玉は、くるくると紙の周りを3週ほどすると、どこかへ飛んでいく。
「!待って」
それは未だに調べられている牢屋に飛んで行くと、またパン、と弾けた。
捜査しているオペレーターたちが驚いて腰を抜かしている中、その光景を目に映す。
「!アルガムさん」
オレンジ色で構成された光の中で、黒焦げになったベッドの上に座っているアルガムさんの形を成した光の玉がいる。まるでホログラムだ。
その手には、あの白い紙屑が握られていた。