第24章 伝えたかった事
「…ひでぇことしやがるな」
シン、と静まり返ったこの場で誰かが呟いた。
次にスチュワードは、あの紙くずを手に取り、視線を落として言う。
「源石術を用いたホログラムをあんな小さな紙くずに込めたのか…こんな膨大な力を使うなんて…自身の鉱石病は酷く進行しただろうに…」
「拡散する一歩手前で止めただろうね。…焼かれている状況まで記憶されているってことは、右手を切られても、身を焼かれても、術は止めなかったということだ」
2人が残念そうにそう分析して言う。
私は、スチュワードから紙くずを受け取り、それを見る。
すると、まるで受け取られるのを待ち望んでいたように、そのくしゃくしゃになった真っ白な表面にジワリと焼け跡が浮かんできた。
それは絵。それも見た事のあるものだ。
「レイリィが最後に描いた絵とそっくり…」
炎に見えなくもない曲線のその中心に描かれた、首の折れた手足のない人のような絵。
いや、人ではないことは確かだ。ならばこれは一体?
「…不可思議なのは突然切れた右手だ。ナイフじゃなければ何で切れたんだ」
「…源石術。それも、至極凝縮されたエネルギー波に近いものだと思う」
「ううーん…」
考えるスチュワードとアドナキエルを他所に、私はじっと紙の絵を凝視する。これさえ分かれば全て掴める気がするんだけど。
何かヒントがあるかもしれない。と、今までの記憶を辿るように、目を閉じた。
『…今、お前がやっていることは…誘拐犯を正当防衛で傷付け、結果的に誘拐された後、記憶操作や幻術をかけた相手に対して謝っているんだぞ。謝られる理由なんてない。頭を上げろ』
『僕は…ちょっと恥ずかしいけど、絵を描くのが好きなんだ』
『帰れなくて残念だな』
『ロドスは居心地がいい』
『至極凝縮されたエネルギー波に近いものだと思う』
『慈悲の欠片もないお前さんにはないものだ。未来ある若者をあんな殺し方しやがって。良い死に方はしないだろうな』
―――『さくらはどうしてロドスに?』
記憶の中のレイリィが笑う。
その手には、食堂で使われている"あるもの"が握られて、弄ぶように宙にくるくると弧を描いている。
もう一度視線を落とすと、それは実物のものと酷似していた。