第24章 伝えたかった事
キュ、と靴が響く地下牢の階段を下りる。
入口の看守長の嫌悪の目を越え、奥へ。
ここでも鼻をつまみたくなるほどの肉が焦げた臭いに顔を歪めて、調査をする人の群れを越えて見知った顔の前で止まった。
「アドナキエル」
「!さくら。来てくれた。さぁ、こっちだよ」
案内された先はアルガムが入っていた牢屋の奥。少し広くなったそこでベンチを囲むように術師オペレーターが数人立っていた。
その中にスチュワードがいて、目を閉じて何かを唱えている。
「スチュワード」
名前を呼ぶと彼は振り返り、目を見開いた。その姿はデッキで走った後のように激しく肩で息をして肺に空気を送り込んでいる。
すると、周りを漂っていた光が途切れ、術師オペレーターたちは大きく息を吐いてその場にぺしゃりと座り込んでしまった。
「あーもう無理!!わかんねぇ!」
「こりゃ難題だな」
と、頭から角が生えたクリーム色の女性と紫色の髪を持った女性がそう言った。
スチュワードはその2人を一瞥すると、息を切らしたまま私を迎えた。
「さくらの言った通り…アルガムの手の中を開いてみれば、紙切れが握られてあったんだ。…はぁ、だけど、その紙切れには暗号術がかけられてあって、術師数人で何とか解除を試みてるけど上手く行かなくて」
「アルガムってそんな凄い術師だったの?」
「人の記憶を操作できる術師は珍しいよ。だからアーツ適正も十分だったんだろう。イフリータさん、ラヴァさんがこんなに頑張っても解けないんだから相当なものだ」
「…そんな人がみすみす殺される…変だね」
「あぁ。…兎に角、この紙はアーミヤさんにも手伝ってもらって解いてみようと思うよ」
そう言ってスチュワードが紙を手にしようとした。それを止めたのはアドナキエルだった。