第24章 伝えたかった事
赴いたのは、ドクターの執務室だった。
3回のノックの後、声がかかってスチュワードは扉を開いた。
中にはドクター、アーミヤがいて、私を見るなり暗い影を落とす。
「ドクター、僕はこれから地下牢に行きます」
「あぁ、アドナキエルとドーベルマンさんが既に入っている。頼んだ」
「はい」
私を室内に入れると、スチュワードは私を見た後軽く微笑んでから出て行った。
少し不安を覚えながら、ドクターのデスク前まで前進した。
すると、ドクターは私の前に一枚の紙を差し出した。
「私は君がやったと思っていない。だが、周りはそうじゃない。あのような強力な業火は他の誰とも生み出せないからだ」
「ドクター、イフリータさんは」
「楽しさを求める彼女が無防備な相手に向かって炎を放たないことなんて周知のことだ。だが…まだ入って間もないさくらを疑う目は止まない。だから現場に近づけない君に少しでも解決の糸口が掴めるように、アルガムの焼死体写真を用意した」
伏せられているこの紙は死体の写真だという。自然と顔が歪んだ。
「嫌なら見なくてもいい。一般人には衝撃的な写真だろうから」
「…いえ、見ます」
紙を手に取り、裏返して手元まで持ってきた。
そこには完全に皮膚が解け落ち、骨がかろうじで残り人の原形を何とか保っている状態の真っ黒なアルガムが映っている。
部屋の中心でうつ伏せに倒れている。左手は頭上に伸ばされ、右手は……?
「右手は?右手首から先が無いように見えるんですが」
「それが、焼かれる直前に刃物でスパッと切られたようで、グ、と拳を作る形でベッドの下に転がっていた」
ドクターは自身で拳を作って見せた。
その手をよく見ると、違和感を感じた。