第24章 伝えたかった事
「その拳の作り方…アルガムさんを完全再現した握り方ですか?」
「ん?あぁ、そうだ。これがその写真だが…断面図が映っているからさくらは」
「あ」
気にせずドクターの手元から写真を分捕った。
生々しい写真だ。確かに骨までばっさり綺麗に切られている。…それと、ドクターの言った通り、拳は親指を中に入れる形で握られている。
「…牢屋は無傷でしたか?」
「あぁ。誰かが牢屋に触れて逃走防止用の源石術を発動させた形跡もない」
「もし何らかの方法で犯人が牢屋に入ったなら、自分が襲われかけて応戦するために拳を作った…というならわかるんですが、この状態の拳を作る意味が分からない」
「うん?」
「つまり、応戦するために作られた拳じゃない…普通、人を殴ろうとするなら親指は4本の指の中に入れちゃ駄目なんですよ」
「ほう?」
今度は自分がその写真を真似て拳を作ってみる。
その後、ドクターにゆっくりとその拳を突きつけて続きを話した。
「このまま殴ると、殴った衝撃で自分の親指が折れる確率が高くなりますから。普通は外に出すんです。戦う人なら既知の事でしょう。…彼は術師ながらも、剣を携えて襲ってきました。それは前衛で戦う人の印だ」
「なるほど…なら何故アルガムはその拳を作った?」
写真をデスクに置いて、人差し指でその4本の指の間を指す。
「…この手は、開いてみましたか?」
「ひ、開く?」
「証拠を握っているかもしれません」
「!なるほど、呼びかけてみよう」
ドクターはインカムに手を当てると、何やら指示をし始めた。
その間に、アーミヤが隣に来て写真を見下ろした。