第24章 伝えたかった事
誘拐事件の筆頭者。少人数のレユニオンを率いていた者。
私に殺すことの何たるかを教えてくれた人、時々アドナキエルとスチュワードに秘密にして会いに行っていた人。
その人が、殺されたという。
「どうして!?誰に?!」
「わからない…だが、唯一わかるのは一番疑われているのはさくらだ」
首を傾げると、スチュワードは手招きをして私をどこかに連れて行く。
その道中でスチュワードは語った。
「アルガムは原形を留めていないほどの炎で焼かれて死んだ。だが、他のレユニオンは生きていて無事だったという」
「え?地下牢はあそこだけなんでしょ?ならレユニオンの目撃者がいるでしょ」
「それがおかしなことに誰もいないんだ」
「え?」
スチュワードは人差し指の第二関節を曲げては、唇に当てて考える姿勢を取った。
「他のレユニオンは眠っていて見ていないと。全員口を揃えて言っている。…それに、看守もその時は気付いたら眠りに落ちていて地下牢は実質無防備だった」
「変、だよね」
「あぁ変だ。偶然が重なり過ぎている…例え深く眠っていたとしても炎の音と、炎が蝕んで薄くなっていく空気の中でそう易々と眠れるかな…」
スチュワードは深くその知識を回転させて事件の謎を解こうとしている。
昨日より真剣な顔をしているのは、勘違いでなければ…
「そんなに真剣なのは…私が、疑われてるから?」
こちらを見る青紫色の目が笑う。
「嫌だろう?好きな人が何もしていないのに疑われるのは」
「っ」
「それに、レイリィの事件だってそうだ。2人が非難される謂れはないからね」
「…イケメン…反則です」
「…事が落ち着いたらちゃんと恋人らしいことしようね」
そう言って彼は私の頭を撫でた。
恥ずかしさで目を逸らしながら恐る恐る頷く。
―――どうか平穏な日常が戻りますように
そう願いながら、スチュワードに連れられるまま歩いて行った。