第20章 無意識の悪魔
「あの人、香水をつけているんです。僕たちにはその臭いは近付くのは勿論、残り香でも吐き気を通り越して倒れる人が続出しているんです」
「うわぁ…」
「それも…あの人は何故か僕たちを知っている様子でした。それ故にフレンドリーに近付いてくるものですから…メランサさんが…」
確かに動物は臭いに敏感で、味には鈍感だ。犬に人間が摂取する量と同等の塩分を与えすぎると死を招くとも知識としてある。
それはこの世界の先民が人間とは違うからだと改めて思い知らされることだった。
「でも変だね。何で知ってるんだろう」
「わかりません。その辺を踏まえてドクターが彼女に事情を聴いているそうです…」
「でももう一日が経つよ?」
「ドクターが心配だ」
苦い顔をする3人に、パチパチと目を瞑る。
先民たちが駄目なら人間である私がいるじゃないか。
「私が様子を見に行くよ」
メランサをベッドに下ろしてその頭を撫でる。
虚ろな目で見るその顔。一緒にいるドクターは先民なのかはわからないが、放ってはおけない。
…元の世界から来たなら、その人も困惑していることだろう。
「ここにいて」
「さくらさん…その、多分アドナキエルさんとスチュワードさんが一番被害を被っているはずです。あの人はずっと彼らを離さなかったみたいですから…」
「了解。行ってくる」
部屋から飛び出して、小走りで廊下を駆けて行く。
まずは情報収集だ。