第19章 ロックオン
ロドスを駆け巡る疾走はこれで2回目だ。
「だぁあ!もー!ついて来ないでー!!」
「さくらが逃げるからでしょうー?」
昨日の一件から少しアドナキエルとスチュワードの2人と顔を合わせづらいな、と感じていた。
だが、特に彼とは食堂で会ってからずっとこの調子だ。…というか昨日の謎の逃走に興味があるだけだろう。
トレーを素早く片付けて逃げ出してから早5分。そろそろ体力的に疲れて来た。非常に横腹が痛い。
だがそれがどうした、と言わんばかりの天使が後ろから走ってくる。
「どうして逃げるんですか。昨日の余所余所しい理由を聞いているだけなのに」
「だから何もないってっ…あぁもう無駄に体力多いな!?」
アドナキエルは食堂から出た時からその足の速さで私を早々に捕まえることはできただろう。
だが、意地悪いことに手加減をして私の少し後ろを走ってくる。
それはまるで走り続けた結果、体力が無くなったところを仕留めるハンターのようだ。
戦略家の名前は伊達じゃない?あぁこれは完全に負け戦だ。
「あぁさっきぶりだね」
「ほああ!?スチュワード!?」
角からひょっこり出て来たのはスチュワードだ。
確かに食堂にいたが、追われ始めて飛び出した時にはもう居なかったような気がする。
絶対この二人仕組んでただろ、と微笑むスチュワードを見上げる。