第18章 武器を持つ意味
「野菜は苦手?」
「ちょっとね」
「ホントは?」
「…嫌い、かなぁ…」
「正直だね?尻尾が垂れ下がってるよ」
「嘘を付けない性格みたいで」
クスクスと笑い合う。正直こんな自分を暴露しながら話せる相手はあの3人の他いないと思っていたが、彼はとても話しやすい。
もう少し話したいという欲求があった。それは相手も同じようだ。
「さくらの趣味って何?」
「趣味…ゲームかな」
「へぇ、いいね」
「君は?」
「僕は…ちょっと恥ずかしいけど、絵を描くのが好きなんだ」
「え!凄い。見てみたいなぁ」
趣味や休日の過ごし方。そんな他愛のない話をしている間にスープの量が減っていく。
カランとスプーンを置いて食材に感謝の言葉を述べた時だった。
レイリィは私が置いたスプーンを掴み、宙に円を描くようにくるくると振るいながら言う。
「さくらはどうしてロドスに?」
最後の質問だ、というような言い方に顔を上げる。
理由としては無い。世界超えて強制的にこちらに連れてこられただけだ。だが、今ロドスに留まる理由は言える。
「ん…最初は成り行きだね。…私のいたところでは戦いとかなかった。けど、見てるだけじゃなくて、戦わなきゃって思わせてくれたのがロドスだったから。ここに来たんだよ」
「凄いなぁ…僕とは大違いだ」
「…そんなレイリィはどうしてロドスに?」
レイリィは小さく笑い、目を逸らした。
「僕の一族はね、根っからの戦闘民族で…傭兵として駆り出される家系だったんだ。…でも、僕は戦うのが好きじゃなくてね。それで実家を追い出されてしまってここに」
「…」
「暗い顔しないでくれ。僕はここに流れ着いて結局戦っているけれど、思っていたほど血生臭くなくて安心しているんだ。…ロドスは、傭兵みたく一人で戦ってるんじゃない。支え合って戦ってる」
「!」
"一緒に戦って"
数時間前に自分が言った言葉だ。
思わず照れくさくなって空笑いをしてしまった。