第18章 武器を持つ意味
その日の夜。
製造所から抜け出してきたらしいアドナキエルとスチュワードは持ち場に戻ると言って行ってしまった。メランサとカーディもまだ製造所というところにいるのだろう。
故に、今日の晩御飯は久しぶりの1人きりとなった。
「(静かなのは久しぶりだな)」
ここ数週間、話しながら食べるということがデフォルトだった。
まるで学生の時のような感覚で、楽しく食べていた。が、少しその日常が違うだけで寂しい。
「(この世界が好きになってたんだなぁ)」
絶望していた状態から数週間でこれほど変わるものだとは思わなかった。
全ては献身的に支えてくれた友達の存在が大きいだろう。
「ふふ……!」
思わず笑みが漏れてしまった。周りから見れば明らかに怪しい奴に見えたかもしれない。
だが、周りには誰も居らず、それぞれの席で楽しそうに会話をしているだけだ。
ホッとした。のも束の間。
「こんばんは、さくら」
「わっ?!…あ、あぁ…こんばんは、レイリィ」
今日の朝に私に告白して来た犬の先民、レイリィだ。
私を見るなり嬉しそうにその尻尾を左右に揺らしている。ここの人は感情が目に見えて良い。
「あ、ご飯中だった?ごめん、出直すよ」
「いいよいいよ。座って」
一言礼を言って机を挟んだ向こう側に座るレイリィは机に頬杖をついた。
「レイリィは食べたの?」
「さっきね。今日の野菜は大きく切られててちょっと苦戦したけど…」
数回瞬きをして視線を落とす。
今日のスープはコンソメ風味。その中に浮いている人参は確かに一回り大きい。
顔を上げると、苦い顔をして笑っているレイリィに、思わず笑ってしまった。