第18章 武器を持つ意味
「僕らでいいのかい?」
「君らなら安心して背中を預けられる。…はは。強いし」
そう言うと、アドナキエルはあのいつもの笑顔で笑って言った。
「わかりました」
その笑みが夕焼けでいつもより輝いて見える。
…いや気のせいではない。
「何でそんな嬉しそうなの…恥ずかしいからそんな見ないでくれませんかね…」
「これから戦う人の顔じゃないね」
「スチュワードはいつも傍観なのに何で今日は茶化すの!もう!」
「はは、ごめんね。さぁ戻っておいで」
「うん」
差し出された手をギュッと握り、もう一度柵に足をかけて安全地帯へ戻る。
こんなことをしといて、実は高所は苦手だ。恐怖症と言うほどでもないが。好き好んでいきたい場所ではない。
安堵のため息を吐いた。
ここにいる意味も無くなった。帰ろう、と2人の服を掴んで引いた。
「まぁさくらが前線に出ることなんて来ないのが一番ですけどねー」
「戦ってほしくないからね」
「そんなこと言うと私も戦ってほしくないって言うよ?」
「そんなこと言ったら困りますよね?」
「そりゃあね」
減らず口でペラペラと喋るのは、上機嫌の証拠だ。
かくいう自分も軽い足取りで階段を下りていく。何故だか、彼らとの距離が少し縮まった気がしたから。
トントン、と鉄の階段を下りて4階の踊り場まで来た。そんな時、後ろから声がかかった。
「さくら」
「うん?」
振り向くと、3段上の階段で止まっているアドナキエルとスチュワードは、2人で顔を見合わせると、手を後ろで束ねて勿体ぶるように言った。
「俺たちは、さくらの味方ですからね」
どうしてそんなことを言ったのか。相手が気まぐれな天使だから考えてもしょうがないの一言に尽きる。
ただ、その言葉は守るなんて言葉よりも、自分には嬉しくて、へらりと笑った。
「2人とも、ありがと!」