第4章 セカンドインパクト
「アドナキエルっ!」「アドナキエルさんッ」
「おや?やぁ、スチュワードとメランサちゃん。さっきぶりですね」
「さっきぶりじゃないだろう…はぁ。探したよ…」
近付いてくるのは先程廊下で出会った2人だ。
息が絶え絶えな雰囲気を見るに、結構探し回ったのだろう。
「だ、大丈夫ですか…?」
メランサと呼ばれた女の子が私に聞いた。頷いて大丈夫なことを知らせる。と、狐のような耳と尻尾を生やしたスチュワードと呼ばれた青年が溜息を吐いた。
「異世界とこの世界にどんな相違があるかわからないんだから、連れ出すのはご法度だって言ってただろう?」
「うーん。あんな閉鎖空間に押し込めるのは気が滅入ってしまいますよ」
「わ、私は大丈夫だから!…っ!」
そうアドナキエルに笑って言うと、不意に強い力で右手を掴まれる。
目を大きく見開くと、先程までヘラヘラと笑っていた目が据わった。
「もう無理に笑ったり、気を使ったり、嘘はつかないで大丈夫ですよ」
「!」
「特に、俺にはね」
視線が自然と下へ下へと降りていく。
懲りずにまた泣いてしまうと、主に2人がぎょっとした顔をしてアドナキエルを責めたてる。
「アドナキエル!」
「アドナキエルさんっ!泣かせるのは酷いですっ」
「ええー困りましたね」
「……ふふ」
そうは言うものの、少しも困った風じゃないアドナキエルに思わず、零れ笑顔が漏れた。
偽りじゃない。その笑顔にアドナキエルもフッと笑ってみせた。
「その調子」
「アドナキエル…」
グッ、と掴んだ手を辿ってアドナキエルを見ると、真剣な顔で言った。
「この世界は貴方に牙を剥くでしょう。しかし同時にロドスは居心地のいい空間を与えます。元の世界より良いとは言えないでしょうが、その保証だけはします。…先程は帰れるなんて無責任なことを言いました。申し訳ありません…」
その言葉に何度も、何度も首を振りへらり、と笑うと、アドナキエルも困った笑顔を見せて、掴んでいる手を引いて私を見ているだけだった2人の前に出した。