第4章 セカンドインパクト
「…ここが、君らが住んでる世界なんだね…」
「そうですよ。あの向こうで、今も誰かが蔑まれて殺されています。そんな世界に、貴方はいます」
「…鉱石病で、苦しんでいる人も…いる」
それは迫害の対象となる病気だということを初日に知った。
その差別をなくすために、この組織…ロドスも戦っているのだということも。
するとどうだろう。途端に自分はとても高慢だったと恥ずかしくなってくる。
「まぁ俺も患ってるらしいんですけどね」
「え?」
カシャンと柵を掴んだアドナキエルを見た。
金色の目は真っ直ぐにどこか遠くを見つめていて、細められている。
「鉱石病は患ったが最後、確実に死に至る病気って…」
「そうみたいですね」
「そうみたいって…いつ発作が起こるかわからないんでしょ?…その、怖くないの?」
私の問いに、金色の目がこちらを向いた。純粋な眼が太陽の光に反射して鈍く光る。
アドナキエルは、さも何も恐くないというように軽く口角を上げて体をこちらに向けた。
「ロドスは鉱石病の治し方を研究する一組織でもあるんですよ。俺は、その可能性に賭けてます。そして、ドクターの指揮の下で戦って、今を生きています」
ロドスに身を投資するこんな若い人が、戦場に出ているという事実が驚きだった。
彼と同様に、ここの人は必死に生きている。そんな人たちに私は恨まれても仕方ない、と思わせるものだ。のうのうと生きている重みを知る。
「…」
自分が何故この世界に来たのかはわからない。だが、彼らの役に立ちたいと思ったのは初めてだった。
それを彼に伝える―――その瞬間に、屋上にあるたった一つの出入り口が勢いよく開かれた。