第18章 武器を持つ意味
「待て、さくら!」
スチュワードが一番に気付いて手を伸ばしたが、その手をすり抜けて、私は手をかけていた柵に足をかけて外の塀の上に立った。
2人は綺麗な目を見開いて私の服の袖を掴んだ。
その必死な様子を見て、俯く。
「ドクターから聞いたよ。私がレユニオンに捕まった時…前線で戦ってくれたのは行動予備隊A4の君たちだって。…後方支援の君たちは、本当は最前線に立っちゃ駄目なのに、私を助ける一心だった。周りが見えてなかったとも、聞いた」
「…」
「怪我無くて良かったけど…お願い、あれっきりにして。私を、守るのは」
「!」
「絵本のお姫様みたいに…守られるのは…嫌だ」
「…」
「特に…アドナキエルの戦略は、自分を犠牲にすることによって成り立ってる。…あのゲームみたいに…勝利が訪れても、手元に何も残らなかったら、負けと一緒なんだよ…」
金色の目が失意に沈んで閉じられた。
そりゃそうだろう。守ると言った相手に守られなくても良いと言われるのは辛いことだ。
しかも、それを言った相手は酷く弱い。まだ殺せるか決心もついていないあやふやな願いだ。
平和な世界で生きて来た人間が戯言を。とも思っているかもしれない。
だが、平和惚けしたこの頭だからこそ考えられる戦略があった。
「だからね。大事に想ってくれている2人だけにお願い」
名前を呼びながら柵の向こうの彼らを見る。
相変わらず俯いているが、
「一緒に戦って欲しい」
その言葉を告げると、バッと顔が上がって私を見る。その目がいつになく丸々としていて、動揺からか、揺れていた。
だが、すぐにホッとした顔を浮かべると、柵についている私の手の上にそれぞれの手を重なった。