第18章 武器を持つ意味
「…それは、勇気とは呼びません」
「…」
「あのレユニオンの方が言った通り、この世界は殺さないと殺される世界なんです。…勇気などと言っていると、その時点でもう死ぬ世界なんです」
「…」
遠くの夕焼けが目の奥に届いて視界が眩む。
思いきりぎゅっと瞑った目のまま「ありがとう、下ろして」と伝えると、地下牢からここまで運んできてくれたスチュワードがゆっくりと私を下ろす。
最初に彼に見せてもらった世界を、またこんな形で見るとは思わなかった。
視線を落としながら、もう一度世界を見つめ直す。
「さくら、そんなに僕たちは頼りにならないだろうか」
後ろのスチュワードがそう聞いた。ゆっくりと首を横に振って返す。
「そんなことない」
「だったら、何で武器なんか…」
「私は…」
言いかけた言葉を飲み込み、柵に手をかける。
しばらく言うまいか考え、結局言う決意をして振り返った。
2人は、随分と悲しそうな顔をしている。
「私は、本当に平和な世界で育った。人が死んでる所なんて見たことがないし、殺されるところなんて見たことがない。だから、この世界の人たちから見れば自衛とかできないとても非力な存在でしょ」
「…そうだね」
「また襲撃があって、私が攫われたとすると、この前みたいにみんなが死に物狂いで助けに来てくれる。"わぁ、やった。助かった。嬉しい。みんなありがと!"…大事な人にそんなこと言うのは、本当に非情な人間だけだ」
「…」
「私は、助けにきてくれた大事な人たちが、私のせいで傷付くのを見るのが嫌なことに気付いた。…今回は誰も傷つかずに済んだけど、次はどうかわからない」
「それは…」
「…私はいつの間にか君たちが…君たちロドスのみんなが、大事になっていたんだ。傷付くのは、見たくない」
「…それは…俺たちの力を信じていない、ってことですか?」
「そうじゃないよ。君たちの実力は確かだ。本当に…強い集団だよ、でも弱みを握られたら君たちは戦える?」
「弱み…?」
「丁度こんな風に」
カシャン、という音が響いた。