第17章 深い謝罪と感謝
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コンクリートの地面に沈んだ体を気遣いながら彼らは、へらへらと笑ってばかりのアルガムを睨んだ。
「話聞いただけで体調崩すんだ。こんな子に人殺しさせようとするなよ」
「攫って記憶操作し、さくらを前線で戦わせようとしたお前たちが言う言葉じゃないな」
「術師か。感情だけでそれをこっちに向けるなよ、恐いな」
腰のホルスターから杖を取り出しては、その先端を青く光らせる。その顔はいつでも放てると言ったように怒りを孕んでいた。
同様に、彼女を抱えている天使も笑みを無くして冷ややかな声で言う。
「その節はよくもさくらを苦しめてくれましたね。俺たちは貴方を許しませんよ」
「はは…お嬢ちゃんのためなら何でもするって顔だな。悪魔にでもなってやるってか。ハッ…お嬢ちゃんはお前らの恋人か何かか?」
その言葉に二人はより一層眉間の溝を増やしてしまう。
敵の感情を探ることを得意としていたアルガムには、その些細な行動が肯定の意味以外見えない反応だった。
「…俺は、そんな大事なものに触れちまったんだな」
「…」
「そんなに大事なら手元に置いておけ」
「…」
「…はは、安心しろよ。今回の件は俺を筆頭とした部下の少人数の犯行だ。レユニオンというよりは個人として力が欲しかっただけだ。上に情報は流れていない。もうお嬢ちゃんを狙うレユニオンはいないだろう」
「その情報も正しいとは限らない」
「そうだな…この情報を漏らした理由としては、記憶操作中、ずっと誰かの名前を叫ぶお嬢ちゃん姿をもう見たくないからだな」
「…名前?」
「きっと、お前の事だろう?…アドナキエル」
「…」
「…怖い顔だな、サンクタの坊主。天使がする顔じゃない」
「…さくらに感謝する事ですね。じゃないと…ここで救済している所だ」
いつもの青年の声より格段に低い声が周りの空気を凍らせる。今すぐにでも腰のクロスボウを取り出そうとする勢いに、スチュワードが止めた。
「アドナキエル。…はぁ、そんなに彼を煽りたいなら僕が相手しようか。僕も貴方に鬱憤が溜まっている所なんで」
「そりゃ勘弁」
金色と青紫の目が怒りで光り輝いた。
To be continued.