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【アクナイ】滑稽な慈悲

第16章 第三者の狼



「着れたかな?」


外でクロージャの声が聞こえた。誰にも見えないが、癖で軽く相槌を打ってカーテンを開いた。


「お、ぴったりだね!」


クロージャがパシパシと私の背中を叩く。
何故だか自分のことのように嬉しそうな三人が近づいて来た。


「よく似合ってるよ」


ポン、と撫でられた頭に俯く。


「あ、ありがと、うっ!?」


また猪が背中に体当たりしてきたようだ。お陰で受け止められたが、スチュワードの懐に体当たりしてしまった。


「アドナキエル。危ないだろう?」

「可愛いかったもので」

「はい、ありがとうアドナキエル…後再三言ってるけど、抱き付くとね、もれなく私が死ぬよ…」

「へぇ、どんな風に?」

「す、スチュワードも便乗して抱き締め、うわぁああイケメンサンドイッチっ…!」

「ズルいです!私も抱き付きますっ」

「メランサ、ぁああ!?」


美男美女サンドイッチの完成だ。
ほぼ潰されている私の光景をクロージャは口に手を当てて笑った。


「仲良いんだねぇ」


クロージャが笑ったままそう言う。恥ずかしくて否定しそうになるが、そう思われるのは気分の悪い事ではない。
むしろ嬉しくて、3人を纏めて抱き締めた


「仲良いです。ね?ってあれー…?」


スルリ、と離れて行ったアドナキエルとスチュワードに、若干傷付く。
はて?流石に嫌だったか。


「照れ屋だねぇ~このこの~!」


クロージャが2人を小突いている。それをじっと見ていると、メランサがぎゅっと抱き付いて来た。


「あ、お代はもう貰ってるから。また何かあれば寄ってね!」

「あ、はい、ありがとうございました」


一礼して店を出る。
元の服と靴は紙袋の中に入れている。このままドクターの所に行ってもいいだろう。


「とりあえず、私ドクターの所に行ってくるよ。お礼言わないと」

「じゃあ私たちは製造所の方に行ってきますね…メイリィが向かうのを見てるので、見に行ってあげないと…ドクターの執務室はわかりますか?」

「うん、大丈夫」

「それじゃ。気を付けて」


頷いてひらりと手を振って背を向ける3人を見送った。

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