第16章 第三者の狼
購買はまるで病院の売店のようなところだ。
ただそれと違うのは、元気のいい可愛らしい女性がいるということ。
「こんにちはー!クロージャの購買部にようこそ!」
迎えてくれたのは黒髪の幼い女の子…とは思うが、実際のところ、購買を受け持っているために年齢はわからない。
「こんにちはー」
「あれ!初めて見る顔だね!そちらは、メランサちゃんにアドナキエルくん、スチュワードくんだね!」
「こんにちは、クロージャさん…今日はさくらさんの服を取りに来ました」
「さくら、さん!えーっと…確か確か…ドクターが先払いしてくれているんだよね!」
「マジか」
思わず呟いてしまった。
これでドクターに会う理由が2つできたということだ。
「さぁこっちだよ!着てみて!送られてきたデータを元に仕入れたから間違いないはず!」
「待って?健康診断のデータそんなことに使ってるの?!ドクター!?」
…これで3つだ。
個人情報の流出に泣きながらも、さぁさぁ、と試着室に押し込められて紙袋の中に入った渡された服を見る。
「…お?」
服を広げると、黒色メインの服が現れる。普段着、というよりは戦闘服に近いだろう。
白いシャツに、薄い防弾チョッキ。その上に黒のフード付きカーディガン。さらにその上に青いラインが袖と裾に入った大きめのコート。…これにはロドスアイランドと英語で書かれてある。みんなとほぼ同じデザインのものだ。
ロドスに受け入れられたんだ、と改めて思う。
下は、今までパンツだったのだが、コートと同じ裾に青色のラインが入った動きやすいスカートで可愛らしい。
「(ドクター…)」
彼の厚意が身に染みる。その服をぎゅっと両手で抱き締めた。
「…」
ゆっくりと、それらの袖に手を通していく。
完全に元の世界で着ればコスプレだが、この世界はこの恰好が普通なのだろう。
「…靴」
同じく渡された靴は足首までのブーツだ。
総合計でいくらだろう、と心配になるが、胸の奥に仕舞っておこう。聞くのは野暮だ。
防弾チョッキに付けられてあるストッパーのようなものを胸の前でパチンと止めれば完成。だ
「(チョッキはアドナキエルと同型のものなのかな)」
それにしても大きすぎるということも、キツいということもない。むしろ着心地が良い。