第16章 第三者の狼
「ごめんね」
自分を大事に想ってくれる人を蔑ろにしてしまった事への謝罪を送る。
グスグスと、泣いてくれている彼女の気持ちを考えていなかったなぁ、と彼女の頭を優しく撫でながらも顔を上げた。
2人にも心配をかけてしま―――「顔怖っ」
思わず呟いてしまった。
一人はいつものニコニコ笑顔。一人は何か考えついたような、顔に影を落とした笑顔を浮かべてどこかを見ている。
「じゃあ俺はドクターにご報告してきますねー」
「じゃあ僕は研究センターの方に行くよ。…誰がこんな痣作ったのか突き止めなきゃね」
「待って?ねぇ待って?怖い!!ねぇ!?2人とも?!」
「さくらはアンセルの所に行っててください」
「治療してもらってね」
慈悲が微塵も無い。…まぁ…大事に想ってくれている証拠と言えばそうなのだろうが、やり方が怖すぎる…
この後、メランサにアンセルの所へ連れていかれ、治療を受けた。
アンセルも心配してくれたのか、
「どうしてもっと早く言わないんですか。最悪痕が残るんですからね!」
と怒る始末。
しばらく彼に怒られていると、ドクターがアドナキエルとスチュワードと共に医務室にやって来るなり、私の腕を見て大きなため息を吐いた。
「すまなかった。こちらの管理不行き届きだ。絞めるから許してくれ」
「あぁはい。…絞める!?」
どうやらあのヘタクソな研究員は絞められるらしい。苦笑いしていると、何やらやりきった顔をしているイケメン2人がパチン、とハイタッチしている。まるで悪戯に成功した子供のようだ。
…だが、守ってくれたのは事実。私は痣があろうとなかろうと、あのヘタクソな研究員の下に通い詰めることになっていただろうから。
「ありがとう、2人とも」
「次からはちゃんと言うんだよ」
「ほい」
「採血は俺がついて行ってあげます!」
「うん、それは大丈夫かな…」
かくして、私の痣は日が経つ度に無くなって行った。