• テキストサイズ

【アクナイ】滑稽な慈悲

第14章 密室で君を知る



「何で、笑うんだ?」

「や、スチュワードも同じようで何か笑っちゃった。何に対しても平静だから」

「さくらは僕を何だと…僕もそういう経験は薄いからね…ごめん、そろそろ出ようか」

「!待って…!」


体を反転させて今度はこちらがスチュワードの口を塞いだ。
その直後、部屋に悲鳴が響き渡る。


「ガチじゃないですか先輩…!!」

「メシ抜きは辛いもんでな」

「俺たちの仲でしょー!?ぐえ!?」


ダンッ、という音と共にロッカーが揺れた。


「「!!」」


思わず声が引っ込んだ。
どうやら、ノイルホーンが重装の後輩と思われる人をロッカーに押し付けたようだ。
すぐにマジックテープが剥がれる音がした。


「いてて…容赦ないっすねー…ロッカーへこんでるんすけど。これ修理出してくれるんすか?」

「この施設はほとんど使ってねぇから一個くらい構わねぇよ。おら、さっさとデッキに戻れ」

「うわー50周だぁ…」


2つの気配が消えていく。
スチュワードの顔を口をひん曲げて見つめると、簡単に察してくれたようだ。


「狭いのに余計狭くなったな…さくら、大丈夫?今扉を開けるから…」


そう言って右腕を拉げた扉に添えて、力を入れ押してみせた。


「…ん?」


ぐいぐい、と押しているようだが、まったく開く気配がない。見つかるのを覚悟で、自分も足を後ろにして蹴ったが、開く気配はない。

これは…


「扉が馬鹿になったようだね…」

「ど、どうするの!?閉じ込められたってこと!?」

「回線は遮断されている。見つかるまで待つか…あるいは…終了後に集合の無線が入るからそれを待つか、だね」

「ひえ…じゃあ後…2時間とちょっと待ち惚け?え、この状態で!?」

「ごめん、嫌だよね」

「いや待って嫌なわけじゃないんだけど…だから、その、ホントに…経験ないだけで…」


自分の声がどんどんと小さくなっていくのが分かる。すると、スチュワードは楽しそうにクツクツと笑った。

/ 216ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp