第14章 密室で君を知る
「背中がお留守ですよ、先輩!!」
「!」
さっきの男性だ。
後ろから鬼に飛び掛かると、すぐに行動不能にしようと赤タグに手を伸ばした。
だが、正規部隊は甘く行かないことを知る。
「あぁ…お前もな!!」
「!うあ!」
綺麗な背負い投げ。だが、その一瞬ががら空きだった。
「!ッ…!!」
ダメもとで突っ込み、その大きな体に飛びつく。
「!」
すると、右手はがら空きの赤いタグを引っ掴んだ。瞬間、身を引くとともに腕を引っ込める。ベリ、というマジックテープが唸りを上げる音が聞こえて目を見開いた。
「うわ、やるなぁ…」
手の中には赤タグ。座り込む鬼に、叫んだ。
「早く逃げて!!」
赤タグを放り、散り散りに走り出した。
赤タグは取られれば10秒間は動けなくなる。再起不能になるわけではない。この10秒間であの速さからどれほど逃げられるかが問題なのだ。
だが、模擬戦場となっているロドス内に蔓延る鬼は一秒たりとも休ませてくれない。
少なくとも、この鬼は。
「ノイルホーンさんから逃げられたんですね。良かったです」
「!」
「俺が捕まえるって決めていましたから」
凛としているが、とても楽しそうな声が鼓膜を揺らす。
施設内を逃げていたらいつかは出会うと思っていたが、まだ少ししか経っていない内に出会うとは。
「アドナキエル…!」
コンテナの上で膝を折り、しゃがみ込んで私を見下ろしている天使は、いつになく意地悪な顔だ。