第14章 密室で君を知る
「!」
その正面にいるのは赤タグの正規部隊。どうやら追い詰められているらしい。
体格は赤の方が俄然上。180センチはあるだろうそのガタイの良い体は普段重装を担っていそうだ。
「弱い者いじめは好かねぇんだがな。俺もメシ抜きは避けたいんだ。わかってくれるだろ?なぁ?」
鬼の腰に下げられている鳥籠のような籠には複数の青タグが見える。この数分でどれだけ手に落ちたかがわかる。
対峙したら逃がす気はなさそうだ。明らかに勝てないだろう。ここはスルー…
「(…)」
今思い出した。これはレクリエーションを踏まえた訓練。協力することを前提に生き残れというものだ
今救えなくて何が仲間だ―――
「…お?…はは。堂々と出て来たな、お嬢ちゃん」
2人の間に入って相手を見上げる。
やめとけばよかったと思わせる程に大きい体。そして額の角に目が行く。
はて、勝てるかわからなくなってきたぞ。
「…逃げて」
「!…っ」
手で合図すると、彼はヒョイヒョイと逃げて行ってしまった。
それを見届けた後、男はその顔を覆うマスクの下でクツクツと笑い、上着のポケットに手を突っ込んだ。
「君…普段重装でしょ。やれるかなって思ってさ」
「俺がノロそうだから素早い女なら逃げ切れるって?おいおい、嘗められたもんだな」
「闘牛にネズミは捕まえられないでしょ!」
そう粋がって地面を蹴り、後ろのコンテナに上ろうとした。が、不意に体がガクンと傾いた。
まさか、そんな。
「闘牛でも、足は速いんだぜ?」
「ッ!」
距離は十分にあった。詰めるには時間が必要だと思っていたためにすぐコンテナに上ってしまえば勝ちだと思っていたのに、いつの間にか詰められて足首を掴まれてしまった。
マスクの下に見えた鋭い目に気圧されて、振りほどくことが敵わず、初めて正規部隊の実力を知った。
終わりか、と自分のタグに近付く手に溜息を吐いた。
その時―――