第14章 密室で君を知る
「よっとー!さあてどこかなー!」
「!」
天使の輪っか。背中から出ている光の翼。そして、腕の赤タグにぞわりとした。
一瞬彼かと思ったが、どうやら女の人のようだ。同じサンクタ族なのだろう。
「(まだ距離としては遠い…でも彼女が狙撃班だったらこの距離でも動くものは察知できるだろうなぁ…)」
私がとった行動は現状維持…ではなく、逃げることだった。
「見っけ!待て待てー!」
「…」
下の階で彼女が他の人に気を取られている隙に逃げる。それでも察知されないようにゆっくりと。
「(人間はゆっくりすぎる動きには気付きにくい…)」
有名な作家が書いた小説でそう言っていたのを思い出した上の行動だ。流石の狙撃班も気付かない。
時間はかかったが何とか高台から身を顰めることに成功した。
すぐ近くで悲鳴が聞こえる。サンクタはどうやらとても身軽な種族らしい。
「(こわぁ)」
すぐにその場から離れていく。
しばらくトントンとコンテナからコンテナ伝いに逃げていると、足音が聞こえた気がしてコンテナから下に降りる。すると、横から妙な音が聞こえて来た。
コツコッ、コツ、コツコツ
「(?…変な足音だな…)」
まるで人間が毎回地面に躓いているような音だ。
何だか奇妙な気持ちになり、見に行きたい気分もあったが、すぐにその場から離れる。
「うわああああ!!」
「は…?」
すぐ後ろから悲鳴が聞こえた。
建物を挟んだ後ろ。丁度足音が聞こえていた所だ。
「人の好奇心は侮れないよね!」
「(やっぱ罠か…)」
さっきの天使の声とは違う女の人の声に、そそくさとその場を離れる。
暫く小走りで移動していると、袋小路に追い詰められた青タグをつけた男性の姿が見えた。