第14章 密室で君を知る
「現時刻を以って、レクリエーショントレーニングを行う!」
テレビで見る広いサッカーコート分ぐらいのデッキが人でごった返す中、そんなドーベルマンさんの声が聞こえた。私はいつの間にか配られた青のタグを指示通りに腕に巻き付けてルールを待つ。
「これは正規部隊員とのコミュニケーションの向上を図った訓練だ。共に助け合い、3時間耐えきってみせろ!」
協力耐久系で思いついたのは、二人三脚3時間耐久…と考えたが、それもそれで辛いなぁと思っていた時だった。
「ルールは5人の鬼から逃げるか隠れろ。ただそれだけだ!範囲はロドス全域とする!鬼にこの青いタグを盗られればその瞬間負けとなる!盗られた者はレクリエーション終了後、デッキを50周するペナルティがある!楽しみながら心してかかれ!」
「(所謂一方的な隠れ鬼ごっこか…)」
「合図から1分間、猶予を与える!その後正規部隊から選んだこの鬼役どもを開放する!全力で3時間頭と体を使って逃げてみせろ!」
顔を上げ、鬼の顔を見る。そこで顔が引きつった。
赤いタグをつけている、そのニコニコ笑顔には恐ろしく見覚えがあった。
「(アドナキエル!?)」
両手を後ろで組んで何が楽しいのか、ニコニコとどこかを見て笑っている。
「タグが盗られなければ体術で応戦してもいい!応戦し、鬼の赤タグを盗り返せば鬼は10秒間の間休止する!体術は良いが、アーツは禁止だ!ただし相手は正規部隊だ、応戦はおすすめせん!」
アドナキエルの力がどれほどのものかわからないが、確かに応戦はしないほうが賢明だろう。どういう技でねじ伏せてくるかわからない。
「また、鬼には知人でも親しい奴でも、手を抜かぬように"全員を捕まえられなければ連帯責任でデッキ50周に加えてメシ抜き"と言ってある。顔見知りだからと言って見逃してもらえると思うな!」
つまり、彼はガチで捕まえに来るということだ。
「(っ!ひえ…)」
目が合った。すぐに人混みに隠れるように姿勢を低くしてなるべくスタートと同時に飛び出せるようにデッキの端っこに配置した。
「では!スタート5秒前!5!4!」
「(ぜ、絶対に逃げ切る…!!)」
「3!2!1…!」
グ、と足に力を入れた。
「訓練開始!!」
最前線で一気に飛び出して、隠れ場所に向かって走り出した。