第14章 密室で君を知る
誘拐事件から1週間が経った。
流石に体も回復して、段々と研究に助力することが多くなってきた。
今は血液を少量から毎日提供している形だ。私の血を使って鉱石病に効くのか研究しているらしい。
結果的に前線に出れない身となったが、こうして役に立てていると思えば心も楽だ。
だが、身体は暇を持て余している。毎日の朝の血液採取が終わればその後はとても暇なのだ。
「(…どうでもいいけど毎日注射…ホントそれだけ技術で何とかならなかったのか…)」
毎日腕の関節から採られるのだが、昨日は左、今日は右、と位置を変えるのだ。
しかも採取する人間は毎回違う。つまり腕の良し悪しがはっきりわかるのだ。今日は後者で、世界の役に立てなければ逃げようかと思った。
「(…痛…)」
右腕には小さな止血テープが張られているのだが、それ以上に広がっている紫色の痣は見ていて他人事のように痛々しい。
…実際に痛いわけだが
誰がどう見ても明らかに機嫌の悪い顔をしていると、前から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
ドーベルマンさんだ。
「あぁさくら」
「ドーベルマンさん。おはようございます」
「おはよう。調子はどうだ」
「バッチリですよ!」
「…その割には不機嫌な顔をしていたようだが?」
バレてらぁ、と顔を逸らす。
この女性は教官であるが故に本当に観察眼が利く。嘘は通用しない。
「まぁいい。これから新人と正規隊とのレクリエーションを交えた簡単な訓練を行うが、参加するか?」
「丁度暇だったんです。ぜひ!」
これで暇が無くなる、と思ったが最後だった。
参加する訓練は、精神攻撃が主となるものだったのだ。