第13章 凍った蠍の火
***おまけ***
「スチュワード」
後ろから声を掛けられた彼はゆっくり後ろに振り返った。そこには首を傾げて金色の目を光らせるアドナキエルがいた。
「今日一日見なかったけど、ヴィクトリアにお出かけ?」
「そうだよ」
「ふぅん…それにしては楽しそうだね」
コツコツ、とわざと靴音を響かせて迫るアドナキエルはスチュワードの目の前で止まった。
両手を後ろで組み、少し前かがみになって上目遣いで見つめている。
「誰と行ったの。俺の想ってる人じゃな…うっ…」
銀と黒の髪の上に大きな手が乗ってくしゃり、と撫でる。
怪訝そうに見つめるアドナキエルは数歩前に歩き出したスチュワードがゆっくり振り返るのを見た。
端をつり上げたその唇の上に、長い人差し指を立てながら、
「秘密」
と言っては、意地悪な笑みを浮かべた。
To be continued.