第13章 凍った蠍の火
「あの氷の蠍!どうやったのかなって色々手探りでやってみたんだけど上手く行かなくてさ!」
そう言ってさくらが差し出したのは、あの赤い石だった。それを見たスチュワードは再度大きく目を見開いた。
「これ…持ってきたのか?…置いて来たと思ったんだけど…」
「え、だってもう一回見たいじゃん!凍った蠍の火!」
「"凍った蠍の火"…?…はは、何か矛盾した名前だね。…いいよ教えてあげる。だからもうデッキを凍らせるのは止めようか」
「はいヴァルポ先生!」
「何その呼び方。…もう。どこから杖持ちだしてきたんだ。後でわからないように直しておくんだよ」
「はいスチュワード先生!」
「先生やめようか」
赤い石を受け取って空へと放り投げるスチュワードは素早く左手で杖を抜いて源石術を放った。
その様子を、尻尾を振り静かに見守る影が2つあった。
「まぁスチュワードらしいな…人を気遣いすぎるのも良くない」
「でもお出かけが無事成功したようで良かった~!」
「……しかしあの氷って瞬時に解けるのか…!?解かす作業とかいるんじゃないのか…!?」
「さぁ?」
「うっ…胃が…!!」
「あれ?ドクター、医務室行く??」
二人が見守る足元で、赤い星がきらりと光った。
デッキ中に響いたのは全てを氷結させる音とさくらの歓喜の声だった。