第1章 これはきっと何かの間違い_
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大きいホールなどにありそうなパーテーション
それは、女子部屋と男子部屋を分けるものとして防大では使われている
その仕切りから奥へ進むとそこはもう男子寮同然だ
ここは女子と男子の差はないが、部屋は着替えやプライベートの面からやはり分かれている
この仕切りからは男子は立ち入り禁止なのだ
その仕切りを通り過ぎ、挨拶してくる後輩に挨拶を返しながら115室まで向かう
何とか目的地に着く事ができ、扉前に立ち私は3回ノックをした
「入れ」
少し冷たくもハッキリとした坂木の声が中から聞こえてきた
『入ります!
113小隊、四学年、山下学生はk…』
「よぉ、山下」
あー、なんという事だろうか。
私の気合いのある挨拶は、ゴリラのドスの効いた声によってかき消されてしまった
通常、相手が入室要領(部屋に入る際の作法)をしてる際は、当たり前だが遮るなど以ての外だ。
しかし、今はお客様が目の前にいる
そして、まだその期間という事だ
西脇も西脇でどこか浮かれているところがあるのだろうか。
『あのさ…私の声に被せて話すの辞めてくれない?』
浮かれてようが浮かれてまいがそんなのどうでもいい
とりあえず、被せるのだけはやめてくれ
こっちは、気合い入れて言ってんだ
そう言うと大きく口を開けてガハハと笑ってる西脇
うん、やっぱりゴリラだ
「悪かった、山下
お詫びに飲むか?」
そう言って先程まで飲んでいたコーラを、こちらに持ってくる西脇
どうでもいいけど私の前に立つのやめてくれない?
後ろの4人が見えないんだけど…
『いや、要らない』
「そうか、コーラが嫌か
お前の好きなレモンティーもあるぞ」
そう言いながら奥の方からレモンティーを持ってくる西脇
いや、どこから持ってきたの?
そんなことを思いながらも、視線はそちらの方にいっていた
衝動的に飲む!と言いそうになったのをぐっと堪える
『ごめん、西脇と間接キスはやだ』
「ん?これは坂木のだぞ」
再び笑うゴリラ
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