第5章 気づくのが遅い二人_
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「ね…姉ちゃん!?」
『は?勇美?あんた何して…』
驚いた様子で俺を見つめている姉ちゃん
「そ、そんな事は後だ!
西脇サブ長に電話かけて!」
『西脇…?いいけど…』
この際、西脇サブ長と知り合いの姉ちゃんなら直接サブ長に電話をかけた方がいいに決まってる
何故?という顔をしながら、サブ長に電話をかけ始める姉ちゃん
『…あ、もしもし?西脇?』
しばらく会話した後、はい。と俺にスマホを渡してくる姉ちゃん
「サンキュー…。あ、サブ長…?
その…すみませんでした!」
過去一、大きな声でサブ長に謝る
「ばっかもーん!」
直後、サブ長の怒声が聞こえた
それは姉ちゃんにも聞こえたらしく、眉間に皺を寄せながらため息をついてる
『私、あっちにいるわ』
そう言って、日陰のベンチを指さす姉ちゃん
「いかなる理由であれ何故、誰かに一声かけなかった!」
「は、はい!」
「防大生としての心構えがなっとらん!
そんなお前には、今日、もう飯は奢らん!」
「…はい」
「駅前の喫茶店で待ってろ!
一七〇〇に迎えに行くからなっ!」
「はいっ!」
それだけ言って、サブ長は電話を切った
とんだ休日になったな…
そんな事を思いながら姉ちゃんの方へ向かうと、誰かが姉ちゃんの隣に座っていた
俺に背を向けている為、顔は見えないが腕に桜がない事だけ見ると同期か…?
『西脇、なんて?』
俺の姿を見るなり、先程の電話の内容を聞いてくる姉ちゃん
「あ、駅前の喫茶店で待っとけって
一七〇〇に向かいに来るらしい」
『へー』
そう言ってケラケラと笑ってる姉ちゃん
なんもおかしくないよ
「えっと…そっちの人は…?」
同期であろう人物を見ながら姉ちゃんに問うと、目の前にいた人物がこっちを向いた
あ、この子、確か乙女ちゃんだ
原田とかが一学年にめちゃくちゃ可愛い子がいるって噂していた
『ここじゃあれだし移動しよっか?』
「はい!」
そう言って立ち上がる姉ちゃん
その後を追いかけるように立ち上がる乙女ちゃん
俺も着いて来いって事だよな?
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