第5章 気づくのが遅い二人_
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「とりあえず、武井の機転で外に出られたけども…」
そう、先程から数分
なんとか、サブ長を説得し俺たちは外に出ることに成功した
「おいおい、あのゴリラなんか買ってるぞ」
お土産屋さんに並んでいるサブ長を冷たい目で見ながら、そう呟く原田
「肉まんのお土産らしい
他の四学年に配るんだとよ」
「沖田〜!復活してくれ!」
「サブ長に対抗できるの沖田だけだもんなぁ…」
ベンチで横になっている沖田の手を握りながら、祈るように叫んでいる原田
「大丈夫か?沖田…」
俺がそう呟いた時、突然、沖田がこちらを向いた
「サブ長、僕も肉まん特大のを…」
「「……」」
「なぁ…こいつ、ここに置いていかね?」
「…ダメだって。気持ちは分かるけど」
こいつ、夢の中でも食べ物の夢見てんのかよ…
呆れかけた瞬間だった
サブ長の遠くから怒鳴り声が聞こえてきた
「おい!お前らも上対番に土産買ってけー!」
「「は、はいっ!」」
「沖田は俺が見とくよ」
「悪ぃ!」
駆け足でサブ長のもとへ向かっていくあいつらを見ながらため息をついた時だった
クイッと制服の袖が引っ張られた
「ハァ、なんだよ、沖田…ッ!」
そこにいたのは沖田ではなく、小学生ぐらいの男の子だった
流行りの戦隊ものの服を着て、涙目でこちらを見ている
「えっと…」
「えぎいんざん!
きょう、おとうさんと、どようびだから
まちあわせなんだけどえきわからなくて!」
「…え?」
「えきいんさん!えぎおしえてー!」
俺の顔を見るなり泣き出す目の前の人物
「いや、俺は駅員じゃなくてっ!…ッ!」
そこまで言って、ふと、先程の出来事を思い出す
“この制服を着ているとよく間違われるからな”
「ぁ…」
そうだった、よく間違われるんだった…
「……」
防大生たるもの
真の紳士…か
「えぎー!」
「わ、分かった!一緒に行こう!」
泣いてる男の子の手を引きながら歩き出す
「すぐつくよ」
駅前まで行って親類がいなかったら交番に預けよう
うん、それが最善策だ
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