第5章 気づくのが遅い二人_
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男の子の手を引きながら歩くこと数十分
最初に、坂木部屋長と別れた桜木町駅に戻ってきた。
「あっ!お父さん〜!」
すっかり泣き止んだ横の人物は、先の方で父親を見つけたらしく俺の手を離して、父親の元に駆けて行った
「ありがとうございました」
「あ、いえいえ!」
男の子の父親から何度もお礼を言われ、なんだか恥ずかしくなる
「じえいたいのおにいちゃん
ばいばいー!」
ニコニコと手を振りながら、歩き出す男の子に手を振り返し一呼吸おく
「さてと…早く戻らないと…
あの土産屋、どのあたりだっけ…」
とりあえず原田に連絡するか…
そう思い、胸ポケットを触る
あれ?スマホが…ない…
“携帯、スマホ、没収〜!”
「ッ!」
ふと、数時間前にサブ長にスマホを没収されたことを思い出す。
はぐれた時の事なんて何も考えてない…!
『いいか、団体行動が基本だ。
もし、はぐれたら…その時は…死だ』
坂木部屋長の言葉を思い出し、サーっと全身の血の気が引いた
背中に冷たい汗が伝う
と、とりあえず財布はある!
公衆電話…もしくは電話を借りて…俺のスマホにかけまくってみるしか…
そう思い、近くにあった公衆電話の前に立つ
10円…10円…
カタカタと10円を持ってる手が震える
おいおい、躊躇ってる場合かよ…
覚悟を決め、電話をかけようとした時ふと、ある人物が俺の目に入った
あの、制服…!同じ防大生だ!
「ッ!」
腕に桜が3つ!
まずい、四学年…!
いや、躊躇ってる場合じゃない。
土下座する勢いで電話借りて…
「すみません…!
防大生の方ですよね?
電話を貸していただk…ッ!」
俺の声と共に目の前の人物が振り返る
そこにいたのは__
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まさかの姉ちゃんだった_