第5章 気づくのが遅い二人_
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そして、ついに胃袋の限界がきてしまったのか
沖田は、いつもと変わらない表情のまま倒れてしまった
「沖田ぁぁぁ!」
意識なくすまで食べ続けるとかバカかよ!
「ちょっとトイレに行ってくる」
ウホウホと言いながらトイレに向かうサブ長
それを見て、武井がすかさずサブ長のカバンを手に取り、何かを探している
「何してるんだ、武井」
「サブ長が横目で見ていたメモがあったんだ。
もしかしたら、この先の行動が…分かる…
あ、あった!」
そう言って、取り出したメモには、汚い字で“俺の考えた部屋っ子への歓迎ルート”と書いてありその下には、今まで行った中華料理屋の店名が書いてあった
「ッ!」
「い…行き先が中華料理屋しかない!」
「おいおい…。
まだ六件も回る気でいるぞ!」
「こ…これは…っ…食いしばきだ…」
「ッ!…食いしばきだと?」
食いしばきとは、体重を増やすことを目的とした指導のことである。
「俺たちが何したってんだよ!」
「いや、これは善意
サブ長も食べているし…
俺たちに大きくなれという…無垢な善意だ!」
俺がそう言った瞬間、サブ長がトイレから戻ってきた
「よぉーし!まだまだ食うぞ!」
急いで、先程のメモをカバンに突っ込み席に戻る
「ん?沖田、どうした?
ほら、好きな卵スープ飲ませてやるぞ」
そう言って、沖田の襟元を持ちながら、卵スープを沖田の口に流し込もうとするサブ長
いやいや、気絶してるの気が付かないのか?
「ほら、飲め」
このままじゃ…俺たちは無垢な善意に殺される…!
全員がそう思った時、武井が手を挙げた
「西脇サブ長!一つ提案があります!」
「ん?なんだ?」
「せっかくの晴れの日
ここは残りを持ち帰りに包んで外で食べませんか?」
卵スープを片手に沖田を反対の手に持ちながら、話を聞いているサブ長
「外出時、食べ歩きは禁止だぞ」
「でしたら、眺めの良い飲食スペースを探しサブ長にこの横浜の魅力を教えて頂きながら、食べられないでしょうか!」
それを聞いて、顎に左手を添えながらうーん…と考えているサブ長
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