第1章 これはきっと何かの間違い_
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先程から30分という時間が経った。
女子部屋には、既に2人の新入生が志織たちと談話していた。
生憎私は、今日までにやらないといけない仕事が山積みになっている為、会話に参加する事は叶わなかった
『えーっと…明日は…』
明日の予定を確認しながら新入生たちの会話を後ろで聞いてると、コンコンコンと扉がノックされた。
はい、どうぞ。と返事をすると大きなボストンバッグを持った女の子が立っていた
後ろには対番であろう学生がこちらを見ている
「ぁ…初めまして…立花美琴です。
よろしくお願いします。」
対番の学生に習ったであろう敬礼を、しどろもどろにやってる目の前の女の子に少し微笑みを感じつつこちらも敬礼をする。
『部屋長の山下華保です
よろしくね。』
そう言うと緊張が解けたようにフワリと笑う目の前の人物
もう一人の新入生はまだか…
そう思ってると扉がノックされる
どうぞ。と一言答えると扉が開いた
一斉にそちらに視線が集中する
「初めまして!岡上乙女といいます
よろしくお願い致します!」
そう言ってビシッと敬礼をしてくる。
その敬礼に私は息を飲んだ
先程の学生とは違う
既に習っていたかのように脇は90度に開かれており五指も揃っている
掌の向きも合っている
非の打ち所がない完璧な敬礼だ。
そして、何よりここで頑張りたいという想いが目から伝わってきた
この目…あいつに似てる
初めて坂木に会った時と同じ目をしてる
『…部屋長の山下華保です
こちらこそ、よろしくね』
そう挨拶すると目の前の人物は一つに結んでる黒髪の毛先を微かに揺らした
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結局、その日は同室の子に色々教える日となり、あいつにも会う事は出来なかった
仕方ない、明日にでも様子を見に行こう
それに部屋長は坂木のところだし、心配する必要もないだろう
そう思い、私は眠りについた
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