第1章 これはきっと何かの間違い_
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そして現在
思い出すだけでため息がでる
あいつには事前に条件をだした
“舎内では他人の振りをしろ”と
まぁ、中指や週番に当たってる学生などは知ることになるけど
そんなことを考えながらPXに入る
少し人が少ない気もするが、いつものPXと変わり映えはないようだ
そのまま飲み物のコーナーに行きお気に入りのレモンティーを取ろうとした時だった
後ろから手が伸びてき、目の前にあったレモンティーが2本消えていった
『ッ!…ぁ…坂木…』
振り返ると私の後ろには鬼の坂木が立っていた
「よぉ…山下」
そう言いながらこちらを見てくる坂木
相変わらず怖い顔してんな〜
『何?坂木もレモンティー飲むの?』
「飲まねぇな…ついでだ」
『は?』
「どうせ菓子でも買いに来たんだろ?
ついでだ、入れろ」
そう言って坂木の手にあったカゴが私の手に渡る
中には先程のレモンティー2本にポテトチップスやコーラ諸々
明らかに西脇が好きそうな物が入ってた
坂木も新入生の為にお菓子を買いにきたのだろうか
『ぇ…?』
いや、何でPXにいるのかなんて今はどうでもいい
問題は、坂木が私に奢ろうとしているところだ
いや、奢られた事がない訳では無い
部屋長同士の飲み会でも奢ってくれた事はあるし、タクシー代を出してくれた事だってある
だが、それは周りに人がいたり何か一緒に物事を行った帰りなどだ
今回は何もしてない
というか、この数日会う事はなかった
半ば、放心状態になっている私の手を引きながらそこら辺にあったお菓子をカゴに入れていく坂木
いやいや、待て待て
絶対おかしい
後で請求されるタイプか?
それとも、代わりに何かして返すとか?
そんな事を考えている間に、いつの間にか会計が終わってたらしい
坂木が持ってる袋を一つ渡される
『ちょ…お金!』
「あ?いらねぇよ」
吐き捨てるようにそう言って坂木は人混みの中には消えていった
何だったんだ?
今のは。
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