第3章 目の付け所_
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ただ、何も言わずに俺を見ていた坂木部屋長だったが、倒れた俺を見てニヤリと口角を上げた
「正解だよ。
俺たちがお前たちにやらせてる反省はただの理不尽だ。」
「ッ!」
え…?
怒られると思っていたが本当にそうなのか?
驚いて言葉が出ない俺を見て西脇サブ長は叫んだ
「総員!腕立ての構え__用意っ!」
そう言われ、俺たちは指示通り腕立ての構えをした
「イス出来ねぇなら、腕立ての構えで聞いてろ!」
そう言って、腕立ての姿勢をしている俺の前に坂木部屋長はしゃがみこみ口を開いた。
「俺たちはお前らに理不尽な事をしている
それはお前らが理不尽を知らねばならないからだ」
「ッ!」
「何故、“理不尽”を知らねばならないか?
災害派遣、外国からの侵略防衛
俺たちは将来、そんな有事の際に指揮を執らねばならない
部下や市民、多くの命を預かる立場にある」
「……」
「有事の際には理屈通りに物事は動いてくれないし情報も不十分
時間も常に不足している
そんな『理不尽な状況』の中で俺たちは、冷静に適切な指示を下さなければいけない」
「…っ…」
「だからこそ、今からその理不尽に慣れ、対処の仕方を心得ておかねばならないのだ」
誰も何も言わずだた、じっと坂木部屋長の話を聞いていた
「近藤、テメェのベッドが飛んだよな?
あれはそれだけが理由じゃねぇぞ
俺は知ってるぞ」
そう言って、俺の頭に手を置く坂木部屋長
「お前は他の奴より多少できる
だから、時間もできるがその時間で何をした?」
何をした…?
それは__
答えようとする俺の頭を、ぐしゃぐしゃにする坂木部屋長
「沖田の反省文を手伝ってただろっ!
理不尽な状況を手伝ったら、沖田が理不尽に立ち向かうチャンスを奪う事になるんだよ!
失敗の尻拭いをするんじゃない」
「…っ…」
「次、失敗しないように手伝ってやるんだよ!
全員ができなきゃ何の意味もねぇんだよ!
連帯責任の意味を履き違えるな!」
「……」
「分かったか?」
「っ…分かりません…
理屈は分かりますが…納得がいきません!」
チラッと横を見ると武井と原田が目で俺に訴え掛けていた
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