第1章 これはきっと何かの間違い_
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その時、三学年だった私は自分で言うのもあれだがよく出来ていた方だと思う
一学年の頃から指導される事は少なかったし、挨拶を忘れるなんて以ての外だった
実家には母と妹がいる
弟は私と同じく優秀らしく早慶を狙える頭らしい
私と違ってあいつは大手企業に就職する
そんな事を思っていた
だが、その日の夜
寝る前にロッカーに立ち寄りスマホの電源を入れると何件かメッセージがきてた
差出人は弟、母、後は…クソ鬼
まぁ、クソ鬼は置いておいて何かあったのか?
そう思い、メッセージアプリを開いた瞬間、私は叫びそうになった
“俺、姉ちゃんと同じ防大を志望校にした”
弟からのメッセージはそう書いてあった
『…ぇ…』
有り得ない、なんという事だ
弟が同じ防大に来るだと?
確かに、あいつは頭がいい
私と違って男だから入ろうと思えば、あまり苦労せず入ることができるだろう
いや、問題はそこではない
ここまで積み上げてきたキャリアがあのドケチなあいつが来ることによって、一気に崩れてしまう
何より、あんな奴と兄弟なんて知られたらどうなるだろうか?
…どうすればいい…?
弟がいるって事はほとんどの奴が知らない
だが、同じ苗字って事が分かれば、兄弟だって事はすぐに広まるであろう
いや…待てよ…?
望みはある
確か____
『やっぱり…』
あいつの事だ
一度決めたことは最後までやり遂げる
例え誰が口を挟んでもきっとそうだろう
それに頭も良い
きっと合格だろうな
『ハァ…』
ロッカーにもたれかかりながらため息をつく
兄弟揃って防大か
まぁ、確かに学費もかからないし手当も貰える
夢のような学校だ
表向きは…
仕方ない
私はそう思い弟に返事をした
“そっか、頑張って。但し___”
そう送信しスマホの電源を落とした
きっと、母や妹も同じような内容だろう
あいつは知らね
今は返す気力がない
そう思いベッドに横になった
何となく…今日は眠れなさそうだ
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