第2章 乗り越えた先に_
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腕立て用意だと?
ちょっと待て、状況がよめない
隣では、沖田が金魚みたいに口をパクパクさせてる
混乱している頭をどうにか正常に戻そうとしていたとき、坂木部屋長が俺の前に現れた
次の瞬間、俺が見たのは地面だった
「…は…?」
投げられた。
そう理解するのには数秒かかった
ジンジンと痛む肩が、本当に投げられたのだと証明している
俺の作業服を掴みながら、坂木部屋長が再び“腕立て用意だ”と言った
「っ…」
分かんねぇ…。
何がどうなってんだ?
姉ちゃんの方を見てもただ、腕立ての姿勢のまま坂木部屋長を見ている
沖田と原田に関しても、怯えてそれどころではない。
「早くしろぉ!」
「ッ!」
再び、坂木部屋長の怒号が響き渡る
やるしかない。
そう思い腕立ての姿勢をとった
それを見て、沖田や原田も戸惑いながらも隣で腕立ての用意をした
「腕立て30回!かかれ!」
坂木部屋長の合図がかかった瞬間、講堂に号令が響き渡った
「一ッ! 二ッ! 三ッ! 」
しんどい。
きつい。
苦しい。
辞めたい。
声なんか出せる訳…
「声が小せぇーんだよ!
しっかり腹から声出せ!
顎が床につくくらい下げろ!」
「はいッ!」
隣で沖田が坂木部屋長に怒られていた
声が小さいだの、腕をしっかり下げろだの。
あちらこちらでそんな声が聞こえてくる。
一体全体、何がどうなってんだよ…
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